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神保町:2019年07月12日:学士会館 Latin


    先日、上野精養軒に行った事もあり、精養軒つながりで神保町の学士会館にあるLatin(ラタン)の事を思い出しました。
    最近、学士会館のある神保町界隈に近い所に仕事柄出没する事もあって、久しぶりに学士会館を訪れる事にしたのでした。

    (左)(中央)小海老とアボガドのサラダ(右)パン




    実に、”8年振り”の学士会館である。
    懐かしい赤い絨毯を歩いて廊下の先のLatin(ラタン)へと。
    お目当ては、@1550円のランチである。
    このラタンは何度か訪れているが、いずれも満足をしていたので非常に良い印象のあるお店でもあったのだが、なかなか神保町界隈に行くきっかけもなかったのでご無沙汰であったのである。
    とは言え”8年”は長い。
    赤い絨毯とクラシックな廊下の雰囲気は相も変わらずに存在しているかのようで、懐かしいという感情よりも、”ずっとこの状態で存在している”と言うある種の安堵感さえ感じたのである

    (左)(中央)若鶏のコンフィ(右)紅茶プリン




    実は、この日に学士会館に行ったのは、たまたまでもあったのだろうが、8年前とメニューの内容が似ていたという事もあった。
    「アボガドのサラダ」と「タンシチュー」の2つである。
    前菜で運ばれてきた「アボガドのサラダ」は、8年前とは違って、アボガドがメインでは無く、海老の方がメインになっていて、まさに主客が逆転していた様であった。
    とは言え、お味の方は、海老にオーロラソースをまぶしてあって、そのまったり感にアクセントを入れる様にアボガドと紫キャベツのシャキシャキ感が格別であった。
    更に、お皿の下の方にあるオランデーズソースが隠し味で、オーロラソースとアボガドと言う、どちらかと言うと【油分】が際立つ味の中でまた違うベクトルが存在しているのも組み立ての妙を感じたものである。

    (左)(中央)若鶏のコンフィ(右)紅茶プリン




    メインのタンシチューは、8年前よりも美味しくなっていた。
    ドミグラスソースのと言うか、ドミグラスソースの中のワインがパワーアップした感じだったのか、酸味が巧い具合に効いていて、ワンランク上の美味しさになっていたのはサプライズでもあった。
    どうやら、シェフが昨年の暮れに変わって、古典的な味をベースに少々の変化を加えるようになったという事が功を奏したのであろうか。
    サービスの方々とお話をすると、「やはりいらっしゃる学士の方々はしっかりと召し上がるし、昔の味にもこだわりがある方々なので、その路線を大幅に崩さない感じでの調整をしています。」との事。
    実はここで【閃いた事があった】
    「昔、懐かしい古典的なフランス料理はこの学士会館で生きてるな?」と。
    そういう意味では、この学士会館は(あくまで自分的には)なかなか興味深い対象としてもっと見てみたいなと思ったのである。
    【学士様】と言うある意味特権的な人々が好ませたもう人々の味わった料理と、そのテイストへの欲求……それは何よりも料理に携わる方々には良い意味での緊張感を産む事であろう。
    それこそ、昔の日本のフランス料理を味わうには、かつての【学士様】が健在な今の時期をおいてはないのでは、とも思ったりもするのである。
    【好機到来ス】まさにそんな発見でもあったのである。

    タンシチューには、薄ピンク色に色づけられたマッシュポテトが添えてあった。
    なかなか芸が細かいなと思うと共に、この辺のアレンジが無理が無くて良い所だろう。

    (左)(中央)若鶏のコンフィ(右)紅茶プリン




    久しぶりに食べた学士会館の「パン」と「バター」は、これも以前よりもパワーアップしていて、パン自体が美味しくなった事と、バターもカルピスバターの様に爽やかで、それこそお替りをしたい位でもあった。
    そして、デザート。「胡麻のプリン」と「紅茶」。
    ここのデザートが美味しくて、8年前は二日連続で通うという事もしてしまったが、今回もその出来の素晴らしさは特筆すべきものであった。
    プリンの密度は以前よりも軽くはなったのだが、それを補って余りある味のバランスの良さとクリームの美味しさである。
    以前の触れたが、学士会館と言えば、【硬い濃厚なアイスクリーム】である。それとは路線は違って、多分に”今風の”と言う路線の付加でもあるのだろうが、少々密度を軽くした分、そこに微妙な空間が生まれて、そこをかなり良質な生クリームが占める事で独特の美味しさを発揮させているかのようだった。
    単純に美味しいというのは、幾つもある事だが、”技あり”と言うのは、なかなかに珍しい。

    ”8年振り”の訪問ではあったが、色褪せることなく、逆にパワーアップしていたと言うのは、望外の驚きでもあった。
    そして、”未だ昔風の味が味わえる”と言う発見もまた嬉しい事であった。
    時間の都合もあるが、なるだけ神保町に所用がある間は学士会館を訪れてみたいと思う、そんなランチの一コマでありました。