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横浜山下町:2013年11月28日:ホテルニューグランド コーヒーハウス ザ・カフェ


    横浜に所要が出来たついでにどうしても寄りたい所があった。日本のもう一つのフランス料理発祥の地とされる”ホテルニューグランド”である。
    ここは、数多くの日本人に本場のフランス料理を伝えたとされるサリーワイルが初代料理長を務めたホテルでもある。
    何故に横浜に?と言うのは、日米修好通商条約で開港して以来、外国の文化がゐの一番に入ってくる最先端の街だったと事と無関係ではないだろう。

    また、このホテルは、1945年8月15日以降、降伏した日本を間接統治しに来たマッカーサー他GHQの高級将校の宿舎になった事でも有名である。
    (この時、マッカーサーの食卓に出された「スケソウダラ」と「鯨のステーキ」が、日本の食料事情を無言で語らしめマッカーサーに食料放出を決定させた。)
    そんな、日本の歴史とフランス料理の結び目でもあるのが、このホテルニューグランドなのであった。

    (左)ザ・カフェ(中央)ドリア(右)日本のフランス料理の祖 サリーワイル



    さて、とは言うものの……今のニューグランドのメインダイニング「ノルマンディ」ではサリーワイル当時の古式ゆかしいフランス料理を提供していない。
    代わりに、サリーワイル所縁の料理は一階にある「ザ・カフェ」で食べる事が出来る。
    ニューグランド本店の中は、ホテル自体が歴史資料館の様なもので、あちこちにサリーワイルの業績を偲ぶような資料を見つける事が出来る。
    出来れば「カフェ」では無くて、しっかりとメインダイニングでサリーワイルの料理を食べてみたいものだが、それを言っては詮無き事なので、おとなしくカフェに向かう。
    昼下がりから午後のティータイムにかけての訪問だったせいか、店内はまばらな感じで、お茶を飲む横濱マダム達の姿が散見された。
    メニューを観て、幾つか食べたいものの候補はあったが、時間が押している事もあり、サリーワイルを象徴する真ん中中のどまんなかである「ドリア」だけを頼む事とした。
    (ドリアは当然、ある程度の時間はかかるのだが)
    少々の時間を置いて「ドリア」が運ばれて来た。
    これが、スイス人サリーワイルが日本に伝えたベシャメルソースを使った伝統の品かぁ……
    そんな感慨を抱きつつ、窓越しに広がる港ヨコハマの様子に、森鴎外がかつて作詞した「飾る宝も入りくる港」と言う言葉をふと思い出しました。
    気が付くと、ギリギリの時刻になっていたので、慌ただしく席を立ち、石造りのニューグランドを出て、中華の匂いのする路地を通って、最寄の「横浜中華街駅」へと足を速めたのでした。